湘南に、人とカルチャーの「交差点」を。|古川航太が仲間と創る「世界一クリエイティブな地域」への道筋。

湘南の街角に、新しい「交差点」が生まれている。アーティスト、クリエイター、地元の方々、そして海外から訪れた人々。年齢も、国籍も、背景も異なる彼らが、音楽とアートを介して笑い合い、語り合う。その中心に、古川航太さんは静かに佇んでいる。彼は主催者でありながら、まるでその場の空気に溶け込むように、人々の繋がりを穏やかに見守っている。仙台で生まれ育った彼が、なぜこの湘南の地で、人とカルチャーが交差する場所を創ることに情熱を燃やすのか。SHONAN WORLD代表、古川航太さん。彼の音に、耳を澄ます。

【movie】


【interview】

就職活動時、合同説明会の会場に足を踏み入れた瞬間、彼は直感的に悟ったという。

黒髪、短髪、同じようなスーツに身を包んだ学生たちが整然と並ぶ光景。そこに広がる「普通」や「常識」という名の空気に、彼は強い違和感を覚えた。

「これは、俺の生きる場所じゃない」

その確信は、怒りや反発というよりも、もっと静かで、根源的な心の声だった。仙台で生まれ育ち、湘南という土地に縁もゆかりもなかった一人の青年が、人とカルチャーが交差する「場」を創ることに人生を懸けるまで。その物語は、この小さな、しかし揺ぎない決意から始まった。

SHONAN WORLD代表、古川航太さん。彼の音に、耳を澄ます。

「好き」を貫く、ということ

幼い頃から、彼は「みんなと同じ」が正解とされる世界に、静かな疑問を抱き続けていた。

みんなが習字セット、男は緑だよね、みたいな常識があったんですけど、僕はその当時、赤の色が好きだったんです。女子が赤、男子が緑。ただ僕はすごい赤が好きだったんで、習字セットも赤を選んだ。その当時はプーマのジャージがすごい流行ってたんですね。でも僕が好きだったのはアディダスで。みんながプーマを着てる中、アディダスのジャージを着てました。

それは、人と違うことをしたいという天邪鬼な気持ちとは少し違う。ただ、自分の「好き」という感覚に正直でありたかった。常識や普通という見えない圧力に、自分の心を譲りたくなかったのだ。

その感覚は、大学時代に彼を新たなステージへと導く。

誰かが輝く「場所」を創る喜び

大学3年生の時、彼はふとしたきっかけで大学祭実行委員会に所属する。そこで感じたのは、お祭りという華やかなイメージとは裏腹の、会社のように堅苦しい雰囲気だった。

その当時、僕の通った大学にはミスターコン、ミスコンみたいなものがなかったんです。大学祭のメインのイベントって、やっぱりミスターコン、ミスコンでしょって思って。僕がそれをやろうって言って、再度復活させたんです。

彼の企画は通り、大学祭の華として、新たなステージが生まれた。さらに彼は、後輩の中から「この子はすごい」と感じた青年に声をかけ、出場を後押しする。

その子が、うちのミスターコンでグランプリを獲って、その後、全国のコンテスト(ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト)でもグランプリを獲るっていう成果をあげました。そんな時に、あ、自分が立ち上げたコンテストの中から人が羽ばたいたっていう瞬間を味わって。そこが今の、アーティストを応援したいとか、羽ばたかせたいっていう一つのきっかけになってるのかなと思います。

誰かの才能を見出し、その人が輝ける場所を創り出す。その喜びに、彼はこの時すでに出会っていた。そして、もう一つの種。彼が所属していたのは「地域構想学科」。地域をより良くしていくための学びの中で、フィールドワークとして東北の様々な土地を訪れ、人々の声に耳を傾けていた。

今やってることって、地域を盛り上げるとか、フィールドが東北から湘南に変わったけど、街づくりだったりする。大学の時の地域構想学科での経験が、今に生きてるのかなって。

この二つの経験が、後の「SHONAN WORLD」の活動の、揺ぎない土台となっていく。

南へ。そして、自分自身の内側へ

合同説明会で感じた違和感は、彼を新たな道へと突き動かした。サラリーマンにはならない。そう決めたものの、何をすればいいのか。そんな時に出会ったのが、サーフィンと、海沿いのライフスタイルだった。

これだ、と思いました。ただ、仙台にいてもこのサーフカルチャーは学べない。そう思って、沖縄県の石垣島に移り住みました。

リゾートホテルでライフガードとして働きながら、彼は海と共に生きる生活を体感する。そして何より大きかったのは、年齢も、経歴も、価値観もバラバラな人々との出会いだった。

石垣島でいろんな人と出会った経験が、今僕が作っている『SCRAMBLE‐スクランブル‐』っていう、ごちゃ混ぜになるようなイベントの原点になってるのかなと思います。

石垣島での日々を経て、彼は現在の拠点である湘南へ。シェアハウスでの多様な仲間との暮らしは、彼に新たなインスピレーションを与え続けた。そして2020年、一つの夢が形になる。自身の苗字「古川」を冠したアパレルブランド、『Old River』の立ち上げだ。

コロナ禍でのスタートだったが、SNSでの反響は大きく、ポップアップストアも開催。特に、地元・仙台のPARCOでの開催は、忘れられない瞬間になったという。

大学時代に憧れてた仙台PARCOの中で、自分のブランドを販売して。一番嬉しかったのは、本当にたまたまそこを通りかかった人が、僕の思いを伝えたら「じゃあ買います」って買っていただけたこと。本当にやってよかったなっていう、忘れられない瞬間でした。

自分の「好き」を形にし、それが誰かの心に届く。その喜びは、何物にも代えがたいものだった。しかし、その一方で、彼は厳しい現実に直面する。

やっぱり、思いだけでは継続することができなくて。数字の問題だったり、ビジネスっていう観点が弱くて、一旦やめるっていう決断をしました。

天職との出会い、そして「交差点」の誕生

アパレルという表現方法を失い、次に何をすべきか模索していた時、彼は運命的な出会いを果たす。それは、シェアハウスの仲間だった一人のアーティストの歌声だった。

アパレルをやりたいことでやったんですけど、そこから、自分が求められること、そして自分ができることにチェンジしていこうと。僕に求められてることって、場作りだったり、人と人を繋げることなんじゃないか。

その気づきは、彼の活動の軸を「自己表現」から「他者の表現の場を創ること」へと大きく転換させた。身内でのパーティーから始まった場作りは、口コミで広がり、やがてコロナ禍で生まれたビーチクリーンイベントへと繋がっていく。50名もの人々が集い、海を綺麗にしながら、新たな繋がりが生まれる。その光景を見て、彼は確信した。

「これだ。やっぱり自分は、人と人を繋げたり、場所を作ることが求められてるし、できることなんだ」

そして2023年、30歳という節目に、仲間との語らいの中から「SHONAN WORLD」は生まれた。「湘南から世界へ挑戦しよう」。そんな仲間との何気ない会話が、彼の新たな羅盤となった。

この湘南地域って、本当に面白い人、自分の『好き』を形にしてる人たちがいっぱいいる。それが点と点になってるような気がしてて。この点と点を結べたら、どんな未来が待ってるんだろう。

SHONAN WORLDは、彼らにとっての「交差点」を創るためのチームなのだ。

未来への招待状

現在、SHONAN WORLDは二つの大きなプロジェクトに向かって走り出している。2025年秋に開催予定の「SHONAN SCRAMBLE FESTIVAL’25」と、表現者たちが集うコミュニティ拠点「SHONAN SCRAMBLE SPOT」のオープンだ。

その活動を支えるのは、「仲間と共に成し遂げたい」という彼の強い思いだ。理想は、アニメ『ONE PIECE』のような、上下関係のない横一線のチーム。それぞれの個性を生かし、一つのビジョンに向かって進んでいく。

僕が大事にしてるのは、チームだったり仲間っていう、人の存在です。僕がこのきっかけで始まったことではあるんですけど、その中には多くの仲間の存在があって。本当にこう、みんなと手を繋いで、みんなで何かを成し遂げたい。

最後に、彼はこう語ってくれた。その言葉は、この映像を見ているすべての人への、誠実な招待状のようだった。

僕自身、本当にこの『好き』っていうことをずっと選択して、いろんなものを振り切ってやってきました。ただ、別にみんながそうじゃなくていい。会社員をやりながら、土日の休みの時にこんなことをやってみたいとか。お子さんがいる主婦の方で、子育てもありながら、隙間時間に挑戦してみたいとか。僕はそういう挑戦も応援していきたい。僕みたいに振り切った人だけができることじゃない。

そんな、小さな挑戦でもいいんです。それでも僕は応援したいし、一緒にやっていきたい。みんなで力を合わせてこの地域をさらに盛り上げて、世界に誇れる街に、そして世界に挑戦していけたらと思います。ぜひ皆さん、一緒に作り上げてくれませんか?

「普通」に馴染めなかった少年は、今、誰もが自分の「好き」を表現できる、ごちゃ混ぜの「交差点」を創ろうとしている。彼の挑戦は、まだ始まったばかりだ。


【photogallery】


【編集後記】

「交差点」。古川航太さんの物語を聴きながら、その言葉がずっと心に残っていました。

人や車が行き交う物理的な場所だけではなく、人生における「交差点」のことです。誰かに出会うこと、新しい価値観に触れること、そして、これまでとは違う道へ一歩踏み出すことを決める、あの瞬間。

「みんなと同じが正解」という空気の中で、ずっと自分の「好き」を選び続けてきた彼の半生は、まさに無数の交差点を渡り続けてきた旅路そのものだと感じます。

そして今、彼は自らが「交差点」を創る側に立っています。かつて彼がそうだったように、どこか居心地の悪さを感じていたり、自分の「好き」をどう表現すればいいか分からなかったりする人々が、安心して立ち止まり、語り合い、そして新たな道を見つけられる場所。

彼の音は、一人の力強い独奏ではありません。様々な楽器の音色が混ざり合い、響き合うことで生まれる、豊かで、温かいオーケストラのようです。その指揮棒が指し示す先にある「世界一クリエイティブな地域」の景色を、僕も一緒に見てみたい。そう、強く思いました。


古川 航太(ふるかわ こうた) SHONAN WORLD 代表

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